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第23話 夏休みの船出

Author: いろは杏
last update Last Updated: 2025-12-23 19:01:00

 七月下旬。梅雨の湿り気は抜けたはずなのに、不知火探偵学園の空気にはまだ、張り詰めた余韻が残っていた。

 期末考査の結果は夏季休暇明けに発表――その一言が、解放感の裏に小さな棘を残している。

 だが、暦の上では夏休みだ。

 猛は、寮の廊下を大きな荷物を抱えて歩きながら、肩に食い込むベルトをぐいと持ち上げた。ボストンバッグにリュック、さらに手提げ。

 学園生活で増えた道具と、島に持ち帰る土産めいたものが詰まっている。汗が首筋を伝い、シャツが背に貼り付く。

 それでも足取りは軽かった。

 実家は離島。帰省は年に数回、長距離フェリーに揺られての移動が、彼にとっての夏の始まりだ。潮の匂い、鉄の響き、海鳥の鳴き声。学園の息苦しさが、海風に削られていく気がする。

 港に着くと、白い船体が陽光を受けて眩しかった。側面に大きく書かれた船名――『サンシャインフラワー号』。派手な名前にしては、どこか実直な厚みのある船だ。車両甲板へ吸い込まれていくトラックのエンジン音が腹の底に響き、出航前のざわめきが港の熱気に混ざっている。

 猛は乗り場の案内板を見上げ、指定された列に並び、チケットを出し、流れに乗ってタラップを上がった。

 午前九時。乗船完了。

 通路には冷房の乾いた空気が満ち、外の熱が嘘みたいに引いていく。猛は一度、窓際に立って港を眺めた。まだ船は動かない。なのに、甲板のどこかで鳴る金属音だけで、もう遠くへ行き始めている気分になる。

 そして――低い汽笛。

 胸が軽く鳴った。出航だ。

 船が岸壁から離れる感覚は、地面の上とは違う。微かな揺れが膝に伝わり、窓の外の景色が、ゆっくりと後ろへ流れ始める。猛は荷物を肩から下ろし、客室フロアへ向かった。席で少し寝るか、売店で何か買うか。夏休み初日の予定は、それだけで十分だった。

 ……そのはずだった。

 船内のカフェスペースに差しかかったとき、猛は思わず足を止めた。

 人混みの向こう、窓際の席に――見覚えのある顔があったからだ。

 華や
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